天気予報では、今年の秋は短いと報じられていたものの、ここ来て季節は一挙に冬の始まりの様相に。
実際、秋らしい日は2週間もあったかなという感じがしていのですが、ここに来てのこの急速な冷え込みから感じる寒さは少々応えるもの。
今年の、冬は平年並みだとの予想。
とはいうものの、ここ数年の冬は暖冬気味であったことを考えると、感じる寒さは一塩のものがあるのではないかとちょっと心配。
そうなると、少々風邪引きの体質であるこの私。
今は、せいぜい予防に気を配って過ごさねばと思っているところです。
なんだかんだで異常気象に振り回され続けた1年でしたが、2024年も残すところあと1か月。
そんな最中、今回の作品は、ここ数年是非とも手に入れたいと思いつも、なかなか願い叶わずようやく念願を果たし入手したこの作品をご紹介したいと思います。
その作品は、テナー・サックス奏者Stan Getzの1986年制作作品、”Voyage”です。
この作品、私が是非とも手に入れたいと思ったのは、予てより、Getz の最晩年その最後まで連れ添ったピアニストのKenny Barronが参加したGetzの演奏がことのほか気に入って、これまでGetzの最終作となった” People Time”や”Apasionado”を聴いて来たのですが、そこまで来ると Barronとの最初の共演作品も聴いてみたくなり探しみたのがその始まり。
そして調べ、それがこの作品だと分かったところで他の演奏メンバーを見てみたところ、目に入って来たのがベーシストのGeorge Mrazの名前。
70年代以降を代表する名ベーシストであるMraz、確かにGetzのバンドに参加していたことがあることは知っていたけれど、私の聴いたBarronが参加のGetzの作品にはその名がなかったことから、まさか
本作にBarronに並びその名前があるとは思いもよらず、これはと思いさらに調べて見ると、この作品がGetzの下でBarronとMrazが共演している唯一のものであるとのこと。
こうなると、是が非でも手元に置いて聴いてみたくなってしまうもの。
そこで、早速入手しようと動き始めたのですが、
しかし......................
この作品、マイナー・レーベル制作の作品であったためか、元々の盤の発行数が少なかったことに加え発表後受けた高い評価で引く手あまたとなってしまったことで、原盤の入手はほぼ不可能となっているとのこと。
さらに再リリース品について見てみると、これも2008年に1度されたのみであるため希少なものであるようで、中古品の価格も結構高値という状況のためとても手を出せず、おかげでこれまで半ば入手を見送り続けてことになってしまったのです。
ところが、最近、日本のヴァイオリニストの寺井尚子を初レコーディングに誘い世界に送り出したのがKenny Barronであったことを知り、そのことから再びこの作品を思い出し、再び中古品価格に目を通したところ、うまい具合に手頃な価格の盤があったのです。
ならば今だ!!の心境で勇んで注文、そして、ようやく叶った数年来の願望成就。
盤が届くなり喜び勇んで聴いてみたのですが.......。
これまで聴いて来たGetzとBarronの共演における、協調しつつも刺激し合い最良のパーフォーマンス を見せていた二人の様子からその出来は間違いないものと確信していたのですが、そこにMrazが加わったということ。
そもそもMrazというベーシスト、この二人以外の他のアーティストとの共演でも相方をサポートしつつも次なる展開を暗示し、相方のプレイにいつもと違う流れと表情の豊かさを与えて来たアーティスト。
そうした、Mrazの影響がGetzとBarronのプレイにどんな影響を及ぼしているのかと、そうしたことを楽しみにしてそのサウンドに臨んだところ、その出来は想像以上。
発行数が少なかったことから、必ずしもGetzの名盤として紹介されることは稀な作品だけれども、聴いた人たちからは大きな評価を得ていた作品だけのことがある。
しかしながら、これ以上語るは、愚の骨頂。
ということで、ご来訪いただいた皆さんにもその名演、この辺で聴いていただくことに致しましょう。
お聴きいただく曲は”I Wanted to Say”です。
Mrazから密かに送られるメッセ-ジを受けて、常に増して芳醇な輝きを放つGetzとBarronのソロ。
これまで、私が聴いて来たGetzとBarronのソロの中でも最良のもののように感じます。
さて、1940年代半ばに登場後、50年代にはクール・ジャズの旗手として、60年代にはブラジルで生まれて間もないボサノバを世界に広めたアーティストとして知られているジャズ界最高との呼び声高いテナー・サックス奏者であるStan Getz。
彼の名盤というと一般的に50年代そして60年代のものが紹介されることが多いのですが、それ以降の作品にも耳を傾けてみると、それぞれの時代に最高の作品があることに驚かされます。
特に60年代になると、ヴィブラフォン奏者のGary BurtonやピアニストのCick Corea等、現代ジャズの巨星となる有望な新人を自己の傘下に加え彼らを世に送り出すと共に、彼らと共に自らもフレッシュな新境地を開拓し続けて行った、そうした彼の姿勢が、それぞれの時代に最高の作品を生ましめる結果をもたらしたと、そのように思うのです。
ここでご紹介している本作品も、Kenny BarronとGeorge Mrazという次世代のアーティストを得て、躍動感あるフレッシュなGetzの姿が現れた名演の一つだと思うのですが、続けてその名演、さらに1曲聴いていただこうと思います。
曲は、ここでピアノを弾くKenny Barron作曲の”Voyage”で、フレッシュかつ躍動するGetZの演奏をお楽しみください。
Victor Lewis の切れの良いスティック捌きに乗って、Getzならではの甘く柔らかなテナー・サックスの音色で奏でられるソロにも尚一層の暖かみと心地良さを感じる演奏です。
そして、その感触は、GetzがChick Corea、Ron Carter 、Grady Tate、3人の当時世代の異なる若手の繰り出すサウンドに、甘く柔らかなテナー・サックスの音色と名人芸ともいえるソロ捌きで、新鮮かつ爽やかな新境地を生む出した1967年の名作”Sweet Rain”をも上回るのではと思わせるものでした。
9月来、身内の冠婚葬祭が相次ぎ、それに振り回され何かと気ぜわしくバタバタと過ごして来た私ですが、今回ようやくこの作品を手にし聴けたことで、疲れから来たものか、溜まっていたモヤモヤ感も幾分和らいだ様子。
今回は、年の瀬に来てやっとのことで手に入れた念願の名作、期待以上のその出来は大満足。
その勢いに乗って来年は、私にとって良い年となるような、そんな気さえ湧いて来ることになってしまいました。
Track listing
1.I Wanted to Say -Victor Lewis-
2.I Thought About You -Jimmy Van Heusen-
3.Yesterdays -Jerome Kern-
4.Dreams -Kenny Barron-
5.Falling in Love -Victor Feldman-
6.Voyage -Kenny Barron-
7.Just Friends -John Klenner-
Personnel
Stan Getz - tenor saxophone
Kenny Barron - piano
George Mraz - bass
Victor Lewis - drums
Herb Wong - producer, line notes
Roger Seibel - Mastered the production
Babatunde Lea - percussion
Recorded
March 9, 1986
Music Annex Recording Studio, Menlo Park, California
この記事へのコメント
mk1sp
上品な感じと軽快さがいい具合です。
余談ですが、学生時代に厨房でバイトしていた、ピアノの生演奏も時々あった、お洒落なレストランのホールで、こういう曲がBGMでかかっていたのを思い出しました、店長の趣味だったのかなぁ
老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)
上品な感じ、なるほど...........
実に的を得た表現ですね。
バイトされていた、こういう曲がBGMが流れるレストラン。
そう聞いただけで、出でてくる食事のおいしさが伝わって来ますね。
いっぷく
老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)
おかげで今は、何をやっても皆順調。
この分では、本年も充実した気持ちで終われそうです。